契約社員の退職は、正社員とは異なる独自の課題があります。契約期間中の退職には「やむを得ない事由」が必要とされ、退職代行サービスの利用にも制限がある場合があるのです。
本記事では、契約社員が安心して退職代行を利用できる条件や注意点、適切な業者の選び方について、具体的に解説していきます。
1.契約社員は退職代行を利用できない可能性がある
契約社員が退職代行サービスを利用できない場合があるのは、雇用契約の性質に起因するものです。
一般的な契約社員は、契約期間が定められており、その期間中の退職には雇用主の合意が求められます。さらに、労働契約法では、契約社員は「やむを得ない事由」がない限り、契約満了前の一方的な退職が困難とされているのが現状です。
参照元:e-Gov検索「労働契約法第十七条 契約期間中の解雇等」
また、通常の退職代行業者が対応できるのは、退職意思を伝える代理行為に限られています。雇用主との交渉を含む場合には、弁護士資格が必要です。特に契約社員が期間途中での退職を希望する際、法的なサポートが必要になることが多く、労働組合や弁護士が運営する退職代行サービスを利用するのが望ましいとされています。
退職代行サービスを利用する際には、業者の選定に慎重な判断が求められます。弁護士や労働組合が提供するサービスであれば、法的に適切な方法での交渉や退職手続きを進められるため、契約上のトラブルを防げます。
2.契約社員が安心して退職代行を利用できる3つのケース
契約社員が安心して退職代行を利用できるケースは3つです。
契約開始から1年以上過ぎている
契約期間が1年を超える契約社員には、労働契約法の規定により、途中退職の権利が認められやすい傾向にあります。契約開始から1年が経過した場合、やむを得ない理由がなくとも契約期間中の退職が可能となるでしょう。この場合、退職代行サービスの利用によって、トラブルを回避した円滑な退職が実現できます。
契約満了前の退職申し出においても、労働組合や弁護士が運営する退職代行サービスの活用が有効となります。
特に弁護士による運営サービスでは、契約社員特有の雇用主との対立を未然に防ぎ、安全な退職へとつながることが期待できるのです。
【やむを得ない理由】がある場合
「やむを得ない理由」としては、以下のような場合が挙げられます。
健康上の理由
健康問題は退職を決意する重要な要因の一つです。持病の悪化や新たな疾病により就業継続が困難となった際には、医師の診断書提出によって、やむを得ない理由として認定される可能性が高まります。このような状況下では、退職代行への依頼により、迅速な手続きの進行が期待できるでしょう。
家族の事情
介護や看護の必要性、配偶者の転勤といった家庭の事情による退職は、「やむを得ない理由」として認められることが一般的となっています。とりわけ、要介護者を抱える場合、日常的なサポートのための退職は避けられない選択肢となるのです。
会社側の都合
経営状況の悪化や業務内容の大幅な変更など、会社都合により継続就業が困難となるケースも存在します。こうした状況下での契約社員による退職の意思表示は、やむを得ない理由として受け入れられやすい傾向にあります。
退職代行の活用により、会社との円滑な交渉が可能となるでしょう。
会社側が退職に合意した場合
契約社員が退職を希望した際、会社側がその意向に合意する場合があります。これにはいくつかの理由があります。
業務の終了
担当プロジェクトや業務が終了段階を迎えた場合、会社側の合意を得やすい傾向にあります。特にプロジェクトベースでの雇用契約においては、業務終了と契約終了が自然な形で結びつくことが多いのが特徴です。
企業の経営判断
経営状況の変化や組織再編により、契約社員の継続雇用が困難となるケースも存在します。このような状況下では、会社側から退職への理解が得られやすく、円滑な退職手続きが実現できるでしょう。
労働環境の改善
労働環境や人間関係に起因する退職希望に対し、会社側が状況改善の一環として退職を容認するケースも見受けられます。このような場合、会社は従業員の意向を尊重し、円満な退職への支援を行う傾向にあるのです。
3.条件に合わなくても任期満了前に退職代行が利用できるケース
労働基準法第15条に「明示された労働条件が事実と異なる場合、労働者は即時に労働契約を解除できる」とあります。つまり、「雇用契約書や入社時の説明」と「実際の労働条件」に大きな違いがある場合、契約社員であっても退職代行を利用して退職することが可能です。
特に、採用・退職の出入りが激しい企業においては、こうした状況が頻繁に見られ、退職代行を利用した即時退職が認められるケースが多くあります。この条項を活用すれば、契約社員でも安心して退職手続きを進められるのです。
参照元: e-Gov 法令検索「労働基準法第十五条 労働条件の明示」
4.契約社員の退職代行における注意点
契約社員が退職代行を利用する際の注意点は、下記の2つです。
- 満了金が受け取れない可能性
- 失業保険受給への影響
満了金が受け取れない可能性
契約社員の場合、契約期間が満了して退職する際に「満了金」を受け取れることがあります。
任期途中で退職する場合においては、支給対象外となるケースが多いです。
満了金の支給は契約内容や会社の規定に依存しており、期間途中での退職では満了金や退職金の支給を強くは期待できません。また、退職代行サービスを通じて退職する場合、特に契約条件に沿って退職を申し出なかったことで満了金を受け取れない可能性が増すため、契約内容を事前に確認することが重要です。
失業保険受給への影響
失業保険(雇用保険)の受給には特定の条件があり、「契約社員として雇用保険に加入していること、かつ退職前に加入期間が12か月以上あること」が必要です。しかし、退職理由が「自己都合」なのか「会社都合」なのかで受給タイミングが異なります。
一般に自己都合退職では給付が最大3か月後に開始され、期間も短くなりますが、退職理由が会社都合の場合は即座に受給開始が可能です。
退職代行を使った場合、失業保険をスムーズに受け取るためのポイントは「会社都合退職」として認定される理由を証明することです。ハラスメントや健康上の理由、給与未払いなどがあれば、労働基準監督署に申告し、会社都合と認定してもらうことが可能です。
弁護士や労働組合が関与する退職代行を選ぶと、こうした認定手続きもサポートしてもらえる場合があります。
5.契約社員に適した退職代行業者の選び方
契約社員に適した退職代行業者の選び方として必要な視点について解説します。
- 契約社員にも対応しているか確認する
- 弁護士監修で非弁行為がないか確認する
- 料金と対応範囲を確認する
契約社員にも対応しているか確認する
契約社員の場合、正社員とは異なる契約内容や退職条件が適用されるため、代行業者がその特殊な状況に対応できるかどうかを確認することが重要です。契約社員特有の課題(例えば契約満了前の退職希望や有給休暇の処理など)に柔軟に対応できる業者を選べば、スムーズに手続きが進みます。
また、信頼できる業者の選定には、利用者の口コミや実績の確認も有効です。業者によっては、弁護士や労働組合がサポートしているところもあり、契約満了前のトラブルや残業代請求にも対応してくれます。こうしたサポートがあると安心です。
弁護士監修で非弁行為がないか確認する
弁護士監修で非弁行為がないかどうかを確認することは、法的なリスクを避けるうえで重要です。
非弁行為とは、法律上、弁護士資格がない業者が代理交渉を行うという意味で、違法です。退職代行サービスの一部では、弁護士が監修していると謳うものの、退職意思を伝える以外の法的交渉を行えないケースも多くあります。
未払い賃金や有給取得などの交渉が必要な場合には弁護士に直接依頼するか、労働組合運営のサービスを利用する方が安全です。
弁護士監修の退職代行業者を選ぶ際は、サービス内容が適法であり、必要なサポートが得られるかをしっかりと確認することをおすすめします。
料金と対応範囲を確認する
退職代行サービスは大きく分けて、一般企業、労働組合、弁護士監修の3種類の運営母体があり、それぞれ料金相場と対応範囲が異なります。
一般企業のサービスは比較的安価で、主に退職意思の伝達に限定されるため、その他の対応を求める場合には適していません。労働組合のサービスは有給消化や残業代請求など、幅広い対応ができるため、コスパが高いのが特徴です。
弁護士監修のサービスは法的なトラブル対応も可能ですが、一般的に料金が割高になります。料金と対応範囲については、事前によく確認してください。
6.契約社員におすすめの退職代行業者4選
退職を決意することは、誰にとっても大きな決断となります。特に契約社員の方は、様々な不安や制約を抱えているかもしれません。
ここでは、そうした悩みを抱える契約社員の方々に向けて、豊富な実績と信頼性を持つ退職代行業者4社をご紹介します。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に最適なサービスを選んでみてください。
セカステ
セカステは、株式会社バックエンドが運営する信頼性の高いサービスです。
おすすめポイント
- 行政書士監修のもと、適正な業務遂行
- 社会保険給付金と失業保険関連の相談可能
- 24時間365日の即日対応
- 全額返金保証制度あり
おすすめポイントとして、行政書士監修のもと適正な業務を遂行しており、社会保険給付金と失業保険関連の相談にも対応してくれます。
また、24時間365日の即日対応体制を整えており、全額返金保証制度も完備されています。対応方法はLINE、電話、メールなどから選択することができます。
無料カウンセリングを実施している点も特徴で、オンライン完結可能なサービスを提供しています。
利用者からは「契約社員だけど退職できた」「引き止めを回避できた」など、高い評価を得ています。
退職代行Jobs
「手続きは最短30分、24時間対応、即日退職連絡可能」が魅力の退職代行サービスです。
おすすめポイント
・弁護士監修の退職代行サービス
・労働組合との連携
・24時間対応
・現金後払いOK
・会社への出社や連絡は不要
・有給休暇の無料申請サポート
・退職できなければ全額返金
・全国対応
・無料の求人サービスで転職活動もフォロー
・弁護士や労働組合のサポート
退職代行Jobsは、弁護士監修のサービスで、弁護士が退職手続きをサポートし、法律的な問題が発生するリスクを低くします。また、労働組合との連携により、会社との交渉もスムーズに行うことができます。
料金は27,000円(税込み)です(別途、労働組合費2,000円が必要)。現金後払いも可能です。
退職代行ガーディアン
キャッチフレーズに「労働組合法人があなたを守る!」を掲げる退職代行サービスです。労働組合法人であるため、弁護士や労働組合のサポートを受けることができます。
おすすめポイント
・労働組合法人であり、弁護士や労働組合のサポートを受けられる(合同労働組合が運営)
・退職届の提出や貸与品の返却は郵送でOK
・代理人として交渉可能
・合法的に確実に退職
料金は雇用形態や地域、年齢などに関わらず、一律24,800円です。追加料金は一切かかりません。
OITOMA
退職代行サービス「OITOMA」の運営元は、労働組合日本通信ユニオンです。
サービスの特徴は以下の通りです。
おすすめポイント
即日退職可能
・プライバシーを保護して退職手続きをすべて代行、会社との直接的なやり取りが最小限に
・弁護士や労働組合との連携・サポート、契約社員が退職する際に発生するトラブルに対応可能
料金は一律24,000円(税込み)です。追加料金などは一切ありません。
退職代行サービスは、他にも多くのサービスがございます。私たち編集部が2024年12月にリサーチした80個近い退職代行サービスの中から厳選した、「おすすめの退職代行サービス10選」はこちらからご確認できます。
7.契約社員でも退職代行を利用できる!安心して次のステージに臨もう
契約社員の退職は、正社員以上に慎重な対応が求められます。退職代行サービスを利用する際は、自身の契約条件や退職理由を確認し、適切な業者を選ぶことが重要です。特に弁護士や労働組合が運営する退職代行サービスを選ぶことで、より安全に退職手続きを進められます。自身の権利を守りながら、新たなキャリアへの一歩を踏み出しましょう。