退職を考えているのに会社への伝え方に悩んでいる方、パワハラや残業代未払いなど労働問題を抱えている方にとって、退職代行は有効な選択肢の一つです。ただし、一般の退職代行業者と弁護士では、できることに大きな違いがあります。
この記事では、退職代行を弁護士に依頼するメリットと具体的な進め方について解説します。
- 退職代行業者と弁護士の違いと、それぞれに向いているケース
- 弁護士に依頼する場合の費用相場と進め方
- 法的保護が必要なケースの見分け方について
1.退職代行サービスとは?基礎知識を解説
退職代行サービスの定義と仕組み
退職代行サービスとは、退職希望者に代わって第三者が会社に退職の意思を伝える代行サービスです。通常、民法627条1項により、正社員(期間の定めのない労働契約)の場合、2週間前に申し出れば退職できるとされています。しかし、実際の職場では様々な要因で退職の意思表示が難しいケースも多く、そのような状況を解決するために生まれたのが退職代行サービスです。
主な退職代行サービスの流れは以下のようになります。
- 利用者が退職代行業者または弁護士に相談・依頼する
- 代行者が会社に対して退職の意思表示を実施
- 退職に関する諸手続きをサポート
- 退職完了まで引き続き支援を行う
詳しくみていきましょう。
1.利用者が退職代行業者または弁護士に相談・依頼する
- 現在の状況を詳しく説明
- サービス内容や費用の確認
- 正式な契約の締結
契約の締結を持って、代行がスタートします。
2.代行者が会社に対して退職の意思表示を実施
- 会社への正式な通知
- 退職届の提出代行
- 会社からの初期対応の確認
「辞めます」という言い出しにくい最初の一言を代行してもらえるのも大きなメリットです。
3.必要に応じて退職に関する諸手続きをサポート
- 退職日の調整
- 必要書類の準備と手続き
- 会社との各種調整対応
煩雑な手続きを専門家に一任できます。
4.退職完了まで引き続き支援を行う
- 退職手続きの完了確認
- 必要書類の受け取り
- 退職金等の精算確認
金銭や書類の受取に不備がないよう、専門的な立場から支援が得られます。
このように段階を追って、確実に退職プロセスを進めていきます。
退職代行は、一言でいうと「退職手続きを代行してくれること」です。しかし、サービスの中身にはさまざま特徴があり、どのような種類があるのかを理解しておくことが、自分に合う退職代行を選ぶ秘訣です。私たち編集部が誰にでもわかりやすいようにまとめた「退職代行」の記事はこちらからご確認できます。
退職代行に弁護士を選ぶべき理由
弁護士による退職代行を選ぶべき主な理由は、法的な専門知識と交渉力にあります。特に以下のような状況では、弁護士への依頼が推奨されます。
1.会社とのトラブルが予想される場合
- 過去に退職を申し出て強く引き留められた経験がある
- パワーハラスメントや違法な労働条件に直面している
- 会社が違法な引き止めを行う可能性がある
「人手不足だから」「今は忙しいから」と何度も退職を阻止されたケースでは、法的根拠を持って毅然と対応する必要があります。また、上司からの暴言や嫌がらせ、過度な労働時間の強要など、労働者の権利が侵害されているケースでは、証拠の収集から法的対応まで専門的なサポートが必要です。
さらに、退職届を受理しない、辞めさせないと脅すなど、会社から違法な引き止めを受ける可能性があると感じている方は、事前に法的な対抗手段を講じる必要があります。
2.退職に付随する交渉が必要な場合
- 未払い残業代の請求を考えている
- 退職金の交渉が必要
- 有給休暇の消化を希望している
残業代請求には正確な労働時間の算定と法的な請求手続きが必要です。過去2年分まで遡って請求可能なため、金額が高額になるケースも多くあります。
退職金の算定方法や支給条件について、就業規則や退職金規程に基づいた交渉が必要です。不当な減額を防ぐためにも専門家の介入が有効です。また、退職前の有給休暇取得は労働者の権利ですが、会社が認めないケースも多く、法的な観点からの交渉が必要となります。
3.法的な保護や助言が必要な場合
- 退職後の競業避止義務について懸念がある
- 退職後の保険や年金の手続きに不安がある
- 会社との間で法的な争いに発展する可能性がある
競業避止義務の範囲や期間が不当に広範な場合、その制限を適切な範囲に調整する交渉が必要です。転職先の選択に影響するため、慎重な対応が求められます。
また、退職を機に様々な請求や主張を行う予定がある場合、将来の紛争に備えて適切な対応を取る必要があります。証拠の保全や交渉経緯の記録など、法的な観点からの準備が重要です。
弁護士・民間退職代行サービスの向き不向きを正直に解説
退職代行の各タイプには、それぞれ以下のような適性があります。
【弁護士による退職代行が向いているケース】
- 残業代請求や労働条件の交渉が必要
- 会社との間でトラブルが発生している
- 法的な観点からの助言が必要
- 退職条件について具体的な交渉をしたい
- 今後の転職や再就職に影響する可能性がある案件
- 精神的なダメージが大きく、確実な解決を求めている
【弁護士に依頼する際の注意点】
- 初回相談は予約が必要で、即日対応が難しい
- 基本的に平日営業時間内での対応となる
- 費用が比較的高額(15〜30万円程度)
- 交渉次第で解決までに時間がかかる可能性がある
- 面談や書類作成など、一定の時間的拘束がある
【一般の退職代行業者が向いているケース】
- シンプルな退職の意思表示のみで十分
- 特に交渉事項がない
- できるだけ費用を抑えたい(2〜5万円程度)
- 早急な対応が必要
- 退職後の法的問題が想定されない
- 会社との関係が比較的良好
【一般業者に依頼する際の注意点】
- 法的な交渉や請求には対応できない
- トラブル発生時の対応力に限界がある
- 複雑な案件には不向き
- 事後的な法的問題が発生した場合は別途弁護士への依頼が必要
- サービス品質にばらつきがある可能性がある
選択の際の重要なポイントは、「スピード」「費用」「必要なサポートの範囲」の3点です。スピーディーな退職実現が最優先なら一般業者、確実な問題解決や法的保護が必要なら弁護士が適しています。
また、一般業者に依頼した後で法的問題が発生し、結果的に弁護士への依頼も必要になるケースもあるため、慎重な判断が求められます。夜間や休日の対応が必要な場合は、24時間対応可能な一般業者のサービスを選択する、もしくは夜間相談に対応している弁護士事務所を探すなど、状況に合わせた選択が重要です。
2.退職代行業者と弁護士の決定的な違い
一般の退職代行業者にできること・できないこと
一般の退職代行業者が提供できるサービスは法律により厳格に制限されています。具体的には以下の範囲に限定されます。
【できること】
- 退職の意思表示の代行
- 退職届の提出
- 基本的な連絡の取り次ぎ
- 会社への伝言の代行
【できないこと】
- 退職条件の交渉
- 未払い残業代の請求
- 退職金の交渉
- 労働条件に関する話し合い
- 法的アドバイスの提供
一般の退職代行業者が法的な交渉ができないのは、弁護士法72条により、弁護士以外が報酬を得て法律事務を行うこと(非弁行為)が禁止されているためです。
そのため補完的なサービスを行うために、民間の退職代行サービスのなかには弁護士や行政書士等、士業との提携や監修を受けているものも存在します。
弁護士による退職代行で可能になること
弁護士による退職代行では、以下のような幅広い対応が可能です。実際の事例を交えながら解説します。
■法的交渉全般
–退職条件の交渉
今月末での退職を希望していますが、会社からは3ヶ月後を提案されています…
このような場合、労働法に基づいて適切な退職時期を交渉できます。
–退職金額の調整
就業規則では退職金が100万円のはずが、50万円しか支給されず納得できません!!
このようなケースでは、計算根拠の確認や適正額への修正交渉が可能です。
–未払い残業代の請求
月80時間の残業に対して、20時間分しか支払われていません…
タイムカードと給与明細をもとに未払い残業代を正確に算定し、請求が可能です。
–有給休暇の消化交渉
引き継ぎの必要性を理由に、退職前の有給消化を認めてもらえません。これって嫌がらせ…?
こんな場合でも、労働者の権利として法的な交渉が可能です。
■法的保護の提供
-違法な引き留めへの対処
こんな半端な状況で辞めるなら、損害賠償請求するからな!
などの違法な脅しに対して、法的な観点から毅然とした対応ができます。
-ハラスメント被害への対応
こんな簡単な仕事もできないなんて、頭悪すぎるんじゃないの?お前なんか他の会社も雇わないって。第一、どの会社に行ってもそんなんじゃやっていけないよ?
上司からの人格否定、暴言やパワハラについて、具体的な事実を基に、慰謝料請求を含めた交渉が可能です。
-労働契約上の権利保護
早期退社する場合は、研修にかかった費用を全額返還して
といった不当な要求に対して、法的な観点から防御できます。
■包括的なサポート
-退職後の法的リスク対策
特に重要なのが競業避止義務への対応です。競業避止義務とは、退職後に競合他社への転職や同業の起業を制限する規定のことで、具体的には以下のような制限が課されることがあります。
競業避止義務の一般的な例
「退職後2年間は、同業他社への転職を禁止する」
「退職後1年間は、取引先企業との取引を禁止する」
「退職後3年間は、同じ業界での起業を禁止する」
このような規定により、キャリアプランに重大な影響が出る可能性があります。たとえば、自身の専門性を活かせる企業が同業他社に限られる場合、希望する転職先を諦めざるを得なくなることも。また、長年培ってきた経験やスキルを全く異なる業界で活かすことは難しく、結果として大幅な収入減につながるケースも少なくありません。
さらに、その業界で起業を考えていた場合は、数年間その機会を逃してしまう可能性があります。特にIT業界や専門性の高い技術職では、数年のブランクが致命的なキャリアの妨げとなることも考えられます。
弁護士による対応例
- 競業避止義務の範囲を「直接の競合製品の開発部門のみ」などに限定する
- 制限期間を「6ヶ月」など合理的な期間に短縮する
- 地理的制限を「同一県内のみ」など限定的にする
- 代償措置(金銭補償)の交渉を行う
なお、競業避止義務は合理的な範囲を超えると無効となる可能性もありますが、その判断には専門的な知識が必要です。弁護士に依頼することで、不当に広範な制限から身を守ることができます。
–社会保険や年金の手続きアドバイス
健康保険の切り替えや年金の手続きについて、具体的なスケジュールを含めたアドバイスが可能です。
–必要に応じた訴訟対応
会社が違法な対応を続ける場合、労働審判や訴訟も視野に入れた対応が可能です。
このように、弁護士による退職代行では、単なる退職届の提出だけでなく、労働者の権利を守りながら、総合的な問題解決が可能です。特に金銭的な請求や法的な交渉が必要なケースでは、その専門性を大いに発揮できます。
弁護士・民間それぞれの向き不向きを正直に解説
双方のサービスについて、具体的な適性を解説します。
【退職代行業者が適している場合】
- 退職の意思表示のみで完結する単純なケース
- 特に法的な問題やトラブルが存在しない場合
- 比較的早急な対応が必要な状況
- 費用を最小限に抑えたい場合
低コストでスピーディーかつスムーズに退職手続きの代行を依頼するには、一般の退職代行サービスが適しています。
【弁護士が適している場合】
- 会社との間で何らかのトラブルが発生している
- 残業代請求など金銭的な請求がある
- 退職条件について交渉が必要
- 今後の法的リスクを懸念している
- 精神的な負担が大きく、専門家のサポートが必要
法的な支援を受けながら、損をすることなく確実に退職手続きを進めたい方にお勧めです。
つまり、選択の際の重要なポイントは、自身の状況における「法的保護の必要性」です。単純な退職なのか、それとも何らかの交渉や法的対応が必要なのかを見極めることで、最適なサービスを選択できます。
3.弁護士に退職代行を依頼する5つの絶対的メリット
3-1.法的な専門知識による確実な退職実現
弁護士による退職代行の最大の特徴は、法的な専門知識に基づいた確実な退職の実現です。具体的には以下のような対応が可能です。
- 労働法に基づいた適切な退職手続きの実施
- 会社からの違法な引き留めに対する法的対応
- 退職に関する権利と義務の明確な説明
- 法的リスクの事前回避と対策
専門的なアプローチにより、スムーズな退職手続きを実現できます。
3-2.残業代請求や退職金交渉も同時に対応可能
弁護士への依頼では、退職手続きと同時に以下のような金銭的請求も一括で対応可能です。
- 未払い残業代の算定と請求
- 退職金の計算と交渉
- 有給休暇の買取交渉
- その他の未払い賃金の請求
一般の退職代行業者では行えない各種交渉を、退職のタイミングで効率的に進められます。
3-3.会社とのトラブルを事前に予防
弁護士は、以下のような観点からトラブルの予防と対策を行えます。
- 退職合意書類の内容確認と修正提案
- 競業避止義務など退職後の制限の適切な調整
- 秘密保持契約などの法的書類の確認
- 将来的な紛争リスクの把握と対策
法的な観点からの予防措置により、退職後に発生する可能性のある問題を事前に防ぐことができます。
3-4.退職後の生活に関する法的アドバイス
退職時には様々な手続きや検討事項が発生します。弁護士は以下のような包括的なアドバイスを提供できます。
- 失業保険の申請手続きに関する助言
- 健康保険や年金の切り替え方法の説明
- 退職後の権利行使期限の説明(残業代請求の時効など)
- 再就職時の法的注意点のアドバイス
包括的な情報提供により、退職後の生活設計をスムーズに進められます。
3-5.心理的な負担を最小限に抑制
弁護士への依頼には、以下のような心理的なメリットもあります。
- 専門家による適切な状況判断と助言
- 会社とのコミュニケーションの代行による精神的負担の軽減
- 法的な裏付けによる安心感の提供
- 退職プロセス全体のマネジメントによるストレス軽減
メンタル面で疲弊している方にとって、精神的なサポートは大きな価値となります。会社と関係が悪化したり、不当な脅しをかけられても自分には弁護士がついていると思えるので、安心できます。また、交渉の窓口が自分ではなく弁護士になるため、問題を自分一人で抱える心配がないのも大きな利点です。
4.弁護士への退職代行依頼の具体的な進め方
初回相談から退職完了までの流れ
弁護士への退職代行依頼は、以下のような段階を経て進められます。
初回相談(無料相談の場合も多い)
- 現在の状況と退職希望理由の説明
- 会社との関係性や問題点の確認
- 残業代請求など追加対応の必要性確認
正式依頼と契約
- 依頼内容の具体的な確認
- 費用の説明と合意
- 委任契約の締結
具体的な退職手続きの開始
- 会社への退職通知の発送
- 必要に応じた交渉の実施
- 退職条件の調整と合意
退職完了
- 退職手続きの完了確認
- 必要書類の受け取り
- 退職金等の支払い確認
このように、退職代行は段階的に進められていきます。一般的な案件では1ヶ月程度での退職完了を目指しますが、残業代請求や退職金交渉など追加の対応が必要な場合は、より時間を要することもあります。ただし、弁護士が介入することで、会社側の不当な引き留めや交渉の引き延ばしを防ぎ、適切なペースで退職プロセスを進めることが可能です。
また、各段階で必要な法的アドバイスを受けられるため、安心して手続きを進められる点も大きなメリットと言えます。
必要な準備と注意点
弁護士に退職代行を依頼する際は、以下の準備と注意点を押さえておくことが重要です。
【準備するべき情報・書類】
- 労働契約書のコピー
- 直近の給与明細
- タイムカードや勤務記録(残業代請求がある場合)
- 会社の就業規則(可能な場合)
- 過去の会社とのやり取りの記録
【注意しておくべきポイント】
- 退職希望日の目安を決めておく
- 引き継ぎ事項の整理
- 会社に残っている私物の確認
- 貸与物品の確認
- 重要な社内データの社外持ち出し禁止
退職代行の依頼前に、これらの準備を整えることで手続きがよりスムーズに進みます。特に重要なのは、自身の労働条件や過去の勤務実態を示す書類です。これらは退職交渉や金銭的請求の際の重要な証拠となります。
また、会社との関係悪化を避けるため、引き継ぎ事項は可能な限り整理し、私物と会社の物品は明確に区別しておくことが望ましいでしょう。秩序ある退職のために、これらの準備と注意点に留意することで、スムーズな退職プロセスの実現につながります。
5.退職代行における弁護士費用の実態
一般的な費用の目安と支払い方法
弁護士による退職代行の費用体系は以下のような構成が一般的です。
【基本料金の目安】
- 着手金:15〜30万円程度
- 報酬金:退職金や未払い残業代を獲得した場合はその一定割合(10〜20%程度)
- 日当:必要に応じて発生(交渉のための出張等)
【支払い方法】
- 分割払いに対応している事務所も多い
- クレジットカード決済可能な事務所も増加
- 法テラスの利用可能なケースもある
一般の退職代行サービスとの費用比較
両者の費用感を表で比較して見てみましょう。
比較項目 | 一般の退職代行サービス | 弁護士による退職代行 |
---|---|---|
基本料金 | 2〜5万円程度 | 15〜30万円程度 |
追加料金 | オプション料金:数万円程度 | 成功報酬:案件により発生 |
交渉対応 | 追加交渉等は対応不可 | 幅広い交渉や法的対応が可能 |
支払い方法 | 一括払いが一般的 | 分割払いにも対応可能 |
対応可能な内容 | 退職の意思表示と書類の受け渡しなど、最低限の手続きが含まれる | 残業代請求・退職金交渉なども可能 |
※案件の複雑さや交渉内容によって費用が変動する可能性があります
弁護士費用が高額になりやすいケースと費用を抑えるコツ
費用が高額になりやすい状況と、費用を抑えるポイントは以下の通りです。
【費用が高額になりやすいケース】
- 会社との交渉が長期化する場合
- 複数の請求項目がある場合(残業代、退職金等)
- 法的手続きが必要になった場合
- 緊急対応が必要な場合
【費用を抑えるための3つのポイント】
1.事前準備を万全に行う
- 必要書類の整理
- 状況説明の要点整理
- 証拠資料の収集
2.複数の事務所に相談する
- 費用体系の比較
- 分割払いの可否確認
- 無料相談の活用
3.依頼内容を明確化する
- 優先順位の整理
- 必要最低限の依頼事項の特定
- オプションの取捨選択
弁護士費用は案件の複雑さや対応の難易度によって大きく変動します。特に、残業代請求と退職交渉を同時に行うなど、複数の請求が絡む場合は費用が膨らみやすくなります。また、会社との交渉が難航し、労働審判や訴訟に発展する場合も、追加の費用が必要となってきます。
ただし、事前の準備を丁寧に行い、依頼内容を明確にすることで、不要な費用の発生を抑えることは可能です。特に初回相談の段階で、見通しや費用感を複数の事務所で確認することをお勧めします。また、分割払いや法テラスの活用など、支払い方法の相談も忘れずに行うことで、費用面での負担を軽減できる可能性があります。
【法テラス(日本司法支援センター)とは】 法テラスは、国が設立した法的支援機関です。収入や資産が一定基準以下の方は、無料法律相談や弁護士費用の立替制度を利用できます。退職に関する問題でも、以下のような条件を満たす場合は支援を受けられる可能性があります。
■要件の目安
- 単身世帯で月収が約18万円以下
- 2人世帯で月収が約25万円以下
- 預貯金が一定額以下
立替制度を利用する場合は、月々分割での返済が可能です。法的支援が必要だが費用面で不安がある場合は、法テラスへの相談を検討してみましょう。
6.弁護士に依頼するべき?退職代行の選び方まとめ
シンプルな退職なら一般サービスという選択肢
単純な退職ケースでは、一般の退職代行サービスも十分な選択肢となり得ます。
【一般サービスが適している状況】
- 退職の意思表示のみで完結する場合
- 会社との間に特別なトラブルがない
- 追加の金銭的請求が不要
- できるだけ費用を抑えたい
- 早急な対応が必要
一般の退職代行サービスを利用することで、必要最低限の退職手続きをリーズナブルな価格で効率的に進められます。
法的サポートが必要な場合は弁護士がベスト
以下のような状況では、弁護士への依頼を強く推奨します。
【弁護士への依頼が推奨される状況】
労働問題が絡むケース
- パワーハラスメントの被害がある
- 違法な長時間労働がある
- 賃金未払いの問題がある
交渉が必要なケース
- 退職金の交渉
- 残業代の請求
- 有給休暇の消化
将来的なリスクが懸念されるケース
- 競業避止義務の調整
- 秘密保持契約の確認
- 退職後のトラブル予防
選択のための最終チェックポイント
退職代行サービスを選択する前に、以下の3つの視点から自身の状況を詳しく確認しましょう。
1.自身の状況の確認
-退職理由の整理
- 単純な転職希望なのか、それともハラスメントなど深刻な問題があるのか
- 会社に対して請求したい事項(残業代等)はあるか
- 退職までの希望期間はどのくらいか
-会社との関係性の確認
- 過去に退職を申し出た際の会社の反応
- 上司や人事部門との関係性
- 同僚との人間関係
-追加請求の必要性
- 未払い残業代の有無とおおよその金額
- 退職金の金額や条件での不明点
- パワハラ等による精神的損害の有無
2.予算と時間の確認
-利用可能な予算の確認
- 手持ち資金はいくらあるか
- 分割払いの必要性
- 法テラスの利用可能性の確認
-時間的な制約
- 希望する退職時期
- 次の就職先の有無や入社時期
- 引き継ぎにかけられる期間
3.退職後のリスク確認
-法的リスクの確認
- 競業避止義務の有無と範囲
- 秘密保持契約の内容
- 研修費用などの返還義務の有無
-キャリアへの影響
- 退職方法が今後のキャリアに与える影響
- 業界内での評判への配慮の必要性
- 転職先での制約の可能性
このチェックリストを基に総合的に判断し、以下のような選択基準で検討します。
【弁護士への依頼を強く推奨するケース】
- 複数の金銭的請求がある
- 法的な交渉が必要
- 退職後のリスクが大きい
- 精神的な負担が大きく、専門家のサポートが必要
- 長期的なキャリアへの影響を考慮する必要がある
【一般の退職代行業者で対応可能なケース】
- 退職の意思表示のみで完結する
- 速やかな退職が最優先
- 予算を抑えたい
- 会社との関係が比較的良好
- 退職後の法的リスクが少ない
慎重に検討した上で、自身の状況に最も適したサービスを選択することで、安全かつ確実な退職を実現できます。判断に迷う場合は、まずは弁護士への無料相談を利用して、専門家の意見を聞いてみることをお勧めします。
7.状況次第で判断してスムーズな退職を実現
退職代行サービスの選択は、自身の状況と必要なサポートの内容によって判断することが重要です。シンプルな退職なら一般業者でも十分ですが、労働問題の解決や法的な保護が必要な場合は、弁護士への依頼を検討しましょう。
費用は一般業者より高くなりますが、確実な退職実現と包括的なサポートを受けられる価値が十分にあります。あなたにとって最適な選択ができるよう応援しています。