上司に退職を言い出すのは、誰もが勇気のいることです。
しかし、自分のキャリアを良い方向に進めるためには、避けて通れない道のり。このハードルを乗り越えるための、タイミングの選び方や伝え方のコツを詳しく解説します。
- 退職を伝えるベストなタイミングの選び方
- 上司への切り出し方のコツ
- 引き止めへの対処法
1. 退職の意思表示は「新しいキャリアの第一歩」

転職を考えているのに、上司に言い出せずに悩んでいませんか? その気持ち、よく分かります。
転職することへの不安、会社や同僚への申し訳なさ、上司に切り出しづらい雰囲気……。そんな状況が続くと、メンタルが疲弊してしまいますよね。
でも、ここで思い出してほしいのは、退職の意思表示は「新しいキャリアの第一歩」だということ。
自分の人生を前に進めるためには、勇気を出して一歩を踏み出すことが不可欠だという自覚を持ちましょう。また、上司にきちんと退職の意思を伝えることは、会社に対しての誠実な対応でもあります。
退職を決意したとき、特に気になるのが上司にいつ・どう伝えるか?かと思います。適切なタイミングには3つのポイントがあります。
2.退職を伝える「ベストタイミング」3つのポイント

退職の意思表示は、タイミングが肝心です。切り出す時期を誤ると、円滑に進まない可能性もあります。
そこで、上司に退職を伝える最適なタイミングの選び方、3つのポイントを解説します。
1. 入社◯カ月は避ける。できるだけ1年は務めよう
入社してすぐに退職を切り出すのは避けましょう。人員配置や業務引き継ぎに支障をきたすだけでなく、会社が注ぎ込んだ教育コストが無駄になってしまいます。
また、職歴の短さが履歴書の傷になったり、ビジネスマナーが身についていないと思われかねません。
会社に対する最低限の恩義を果たすという意味でも、できれば1年以上は務めるのが望ましいでしょう。
1年あれば、一通りの業務サイクルを経験し、スキルや人間関係を築く時間も確保できます。転職活動時の「1年以上勤務」の条件もクリアできて一石二鳥です。
ただし、極端なパワハラやセクハラを受けている場合や、従業員の権利が著しく侵害されているような場合は例外です。健康上の理由で働けないというなら、1年未満での退職もやむを得ないでしょう。
また、誤解がないようにお伝えしますと、退職はすべての労働者の権利であり、勤続年数・期間を問わず、2週間前に退職を伝えれば、誰でも退職可能です。
円満退職のため、そして今後のキャリアのためには1年以上続けてから辞めることが望ましいのですが、状況に応じて無理のない範囲で考えてみましょう。
2. プロジェクトの節目や年度末が狙い目
プロジェクトの区切りや年度末は、退職の意思を伝えるチャンスです。
一連の業務が完了し、メンバーの入れ替わりも起こりやすいタイミングなので、引き継ぎや後任者の確保がスムーズに進められます。自分の担当業務に一つの区切りをつけられるのも魅力ですね。
年度末は多くの企業で人事異動が行われる時期。新年度に向けて体制を整えやすく、会社としても受け入れやすい環境にあります。
決算の区切りでもあるので、自分のこれまでの貢献を振り返るのにもぴったりでしょう。
退職の意思は1〜3カ月前には伝えておきたいところ。引き継ぎ資料の作成や業務の移管には時間を要しますし、会社によってはもう少し長めの猶予が必要なケースもあります。
3. 上司のスケジュールを考慮する
上司に退職の意思を伝える際は、スケジュールを考慮することが大切です。
タイミングを見誤ると、十分な話し合いができない恐れがあります。上司が心理的にも時間的にも余裕を持てる時を見計らって切り出すのが効果的でしょう。
午前の早い時間帯や午後の遅い時間帯など、一息ついたタイミングを狙うのがおすすめ。会議や出張が少ない週の中日なども狙い目です。
一方、月初めや月末の繁忙期、上司の機嫌が悪そうな時、トラブル発生中、大きなミスの直後、重要なイベントの直前などは避けましょう。
退職の意思表示は、上司との信頼関係を大切にしながら行うことが求められます。 切り出し方のコツを押さえて、円滑にコミュニケーションを図っていきましょう。
退職を切り出すタイミングのポイントが分かったので、次はどう切り出すかのコツについても知っておきましょう。
3.退職の「切り出し方」のコツ5選

「切り出し方」とは、退職の意思を上司に伝える具体的な方法のこと。
話し方ひとつで、受け止められ方が大きく変わります。ここでは、円滑に退職を伝えるための5つのコツを紹介します。
1. 事前の伝え方「〇〇の件で相談があるのですが…」
退職の意思は、事前に上司に伝えておくのが望ましいでしょう。
切り出す際は、あらかじめ上司のスケジュールを確認し、十分な時間が取れるタイミングを見計らいます。切り出し方の例をいくつか挙げます。
アポ取りの声かけ例
「明日か明後日、〇〇の件で30分ほどお時間をいただけますでしょうか?」
「来週お時間をいただいて、少しお話できればと思うのですが…」
「相談したいことがある」と事前に伝えておけば、突然の申し出による上司の心理的負担を和らげることができます。社内手続きもスムーズに進むはずです。
ただし、当日まではいつも通りの仕事ぶりを心がけましょう。
引き継ぎ資料の準備を始めたり、同僚との良好な関係を保つことも大切。退職後の計画を具体化するのにも良い機会です。事前の根回しを丁寧に行えば、安心して円滑に退職の意思を伝えられるでしょう。
2. 当日の切り出し方「退職を考えています」が無難
実際に上司と向き合った時、退職の意思をどう切り出すか。基本的には「退職を考えています」と、シンプルに伝えるのが無難でしょう。
この言い方なら、退職の意思は伝わりつつ、検討段階という語感で柔らかく伝えられます。上司の反応を見ながら、話を進めていくことができるでしょう。
他にも、状況に応じてこのような言い回しを活用してみましょう。
退職意思の伝え方の例
「転職を考えております」
「新しいキャリアに挑戦したいと思っています」
「一身上の都合で退職したいと考えています」
など、ニュアンスの違う言い回しを検討してみてください。
ただし、伝え方には注意が必要です。上司を尊重する言葉遣いを心がけ、シンプルに、明瞭に伝えること。
回りくどい言い方は避け、退職の意思はハッキリと示しましょう。曖昧な態度では、誤解を招くこともあります。
切り出し方ひとつで、上司との円滑なコミュニケーションが始まります。言葉選びには細心の注意を払ってください。
3. 退職理由は具体的に、感情的にならないように伝える
退職の理由は、できるだけ具体的に伝えましょう。上司もあなたの状況を正確に理解する必要がありますし、前向きな理由であれば応援してくれるかもしれません。
引き継ぎ業務の割り振りなど、実務面での協力も得やすくなるでしょう。
ただし、感情的にならないよう気をつけてください。会社や上司への不満をぶつけたり、同僚の悪口を言ったりするのは厳禁です。泣き言を言うのも避けましょう。
具体的かつ前向きな理由の例を挙げておきます。
退職理由の伝え方の例
「新しいスキルを身につけるため」
「より大きな責任のあるポジションにチャレンジするため」
「ワークライフバランスを改善するため」
「家族の事情で転居が必要になったため」
など、建設的で納得感のある理由を選びましょう。
いずれにしろ、簡潔に、礼儀正しく伝えるのが大切です。上司の時間を無駄にせず、会社への感謝の気持ちを示すことで、良好な関係を保ったまま退職できるはずです。今後の人脈づくりにもプラスになりますよ。
4. 「迷惑をかけて申し訳ない」と言う必要はない
上司に退職の意思を伝える時、「迷惑をかけて申し訳ありません」という言葉は不要です。
退職は個人の自由な選択であり、謝罪する必要はありません。むしろ、そんな言葉を口にすると、自分の決意が曖昧に映ってしまうかもしれません。
とはいえ、世話になった上司や同僚、お世話になった会社への感謝の気持ちは大切にしたいところ。
退職の意思を伝えた後に、改めて「お世話になりました」「ご指導いただき、ありがとうございました」と、感謝の言葉を添えるのがおすすめです。
また、「申し訳ない」という言葉の代わりに使うおすすめの言葉を紹介します。
申し訳ない気持ちを上手に伝える、おすすめの言葉
「〇〇さんにはご面倒をおかけすることになります」
「引き継ぎには最大限協力させていただきます」
相手の引き継ぎ業務の負担を考慮し、退職後のサポートを積極的に申し出るのも良いでしょう。謝罪ではなく感謝と協力の意を示すことで、あなたの誠実さが上司に伝わるはずです。
5. 世間話から切り出すのはNG。単刀直入に言おう
「天気が良いですね。じつは相談が……」など、世間話から退職の話を切り出そうとするのはNGです。
退職の意思を伝えるのは重大な場面。あまりに唐突だと、上司も戸惑ってしまうでしょう。単刀直入に切り出すのがベストです。
真剣に話を切り出す、最初の一言
「今日はお時間をいただき、ありがとうございます。実は、退職について相談があります」
まずは要件を明確にした上で話を始めましょう。事前に上司の時間を確保し、プライベートな場所で話ができる環境を整えておくことも大切です。
また、退職の意思は、一度きりの相談ではなく、何度か上司と話し合う中で伝えていくことになるかもしれません。
その場合も、「前回お話ししたように、退職を考えています」と、これまでの経緯に言及しつつ、単刀直入に切り出すのが良いでしょう。
世間話で場を和ませようとするのは、よほど上司との関係性が近くない限り、逆効果です。真摯に、真正面から向き合う姿勢が何より大切だと心得ておきましょう。
4.「引き止め」を上手にかわす方法3つ

退職の意思を伝えると、上司から引き止められることがあります。「もう少し続けてみないか」「君の成長を見守りたい」など、さまざまな言葉をかけられるでしょう。
上司としては、部下の退職を簡単には受け入れがたいものです。優秀な人材を失いたくない、新たに採用・教育するのは大変だ、といった事情があるのかもしれません。
上司の引き止めをどうかわしていけばよいのか。3つの方法を順にご紹介します。
1. 「決意は固い」ということを伝える
何より大切なのは、「退職する意思は変わらない」ということを、はっきりと上司に伝えることです。
「よく考えた上での決断です」
「新しいチャレンジをしたいという思いは揺るぎません」
など、言葉を選びつつ、決意の固さを示しましょう。
その上で、「引き続きこの会社で学ばせていただきたかった気持ちは本当にあります」など、上司の思いを汲んだ一言を添えるのもおすすめです。上司の側に立って考えられる姿勢は、好感度アップにつながるはずです。
ただし、「また働かせていただきたい」などの安請け合いは禁物。あくまで、退職の意思は変えないことを前提に、丁重な対応を心がけましょう。
曖昧な態度を取ると、引き止めに応じたと受け取られてしまう恐れがあります。毅然とした姿勢で、上司を説得していくことが肝要です。
2. 具体的な転職先の企業名は伏せておく
「どこに行くんだ?」
「転職先は決まっているのか?」
上司から、このような質問を受けることがあるかもしれません。しかし、具体的な転職先の企業名を伝えるのは避けたほうが賢明です。
転職先を明かすと、「あそこは大変だぞ」「うちのほうがいい待遇だ」など、余計な口出しをされてしまう可能性があります。
「まだ先のことなので……」とにこやかにかわすか、「企業名は控えさせてください」とキッパリ言うのが得策でしょう。
また、内定が出ていない段階で転職先を伝えてしまうと、内定辞退時に面倒な事態になりかねません。進路が確定するまでは、秘密にしておくのが賢い対応です。
「自分にとってステップアップになる企業を探している最中です」といった伝え方なら、前向きな姿勢も感じられて好印象でしょう。言葉を上手に選んで、詮索をかわすよう努めましょう。
3. 条件面の交渉には応じない
「給与を上げるから、もう少し続けてくれないか」
「役職を用意するから、残ってほしい」
引き止めの条件を提示されることもあるでしょう。この誘いに乗ってしまうと、自分の人生設計が大きく狂う可能性があります。安易に応じるのは避けたほうが賢明です。
「(給与や役職に)魅力的なお話をいただき、ありがとうございます。しかし、今の私には新しいチャレンジが必要だと感じています」
と、毅然とした態度で伝えましょう。もちろん、大幅に条件が改善されるなら、退職を撤回する選択肢もあるかもしれません。
ただし、退職を撤回したくなるほどの提案がなされること自体が稀です。まずは、自分の意思を曲げない強い姿勢で臨むことが大切だと心得ておきましょう。
会社に残るメリットと、自分の夢や目標とを天秤にかけ、後者を優先できる勇気を持つことが何より重要です。優柔不断な態度では、自分のキャリアを思い通りに描くことはできません。
条件面の交渉にはキッパリと応じない姿勢を貫き、自分の意思を貫く強さを見せつけましょう。
5.【番外編】退職を言い出せないと思ったとき、考えたい3つのこと

以上、上司への退職の伝え方について詳しく見てきました。が、この記事を読んでもなお、「やっぱり言い出せない……」と感じるあなたもいるかもしれません。
心の中では「退職したい」と思っているのに、決断するのが怖い。上司の反応が心配で、切り出すのが億劫だ。さまざまな不安が、行動を躊躇させているのかもしれません。
そんなときは、一度立ち止まって、自分自身と向き合ってみてください。
1. 退職は何も悪いことではないと自覚する
「退職=悪いこと」というイメージを持っていませんか?
「こんなに世話になったのに、辞めると言い出すなんて恩知らずだ」
「今この時期に辞めるなんて、会社に申し訳ない」
こんな考えが、あなたの行動を阻んでいるのかもしれません。
しかし、退職は、何も悪いことではありません。むしろ、ある意味で勇気ある行動とも言えます。
自分のキャリアを良い方向に変えていこうと決意し、一歩を踏み出すこと。会社にとっては痛手かもしれませんが、あなた個人の人生においては、新たなスタートを切るための重要な選択なのです。
「チャレンジしてみよう」「より良い環境で働きたい」
そんな一心で退職の決断をしたのなら、罪悪感を感じる必要はありません。堂々と、胸を張って、退職の意思を伝えていく強い意志を持つことが大切です。
2. 理想の上司はいない。「言いづらさ」は誰にでもある
「うちの上司は理解がない。だから言い出しづらい」
「言いやすい上司なら、とっくに伝えているのに」
このように、理想の上司像を思い描き、それとの比較で言い出しづらさを感じている人もいるかもしれません。
しかし、現実には「退職を告げやすい」理想の上司などいません。多かれ少なかれ、どの上司も部下の退職は快く思わないものです。
あなたの思い描く「優しく諭してくれる」「応援してくれる」理想の上司像は、幻想といっても過言ではないでしょう。
「理想の上司」を求めるのはやめにして、自分の内なる声に正直に、退職の一歩を踏み出す決意を固めていきましょう。
3. 先延ばしにするほど、自分のキャリアにダメージが出る
退職の意思表示に悩んだら、一人で抱え込まずに、信頼できる人に相談するのも良いでしょう。 厚生労働省は、職場のメンタルヘルス対策の一環として、社内外の相談窓口の設置を推奨しています。
参考:厚生労働省 ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
先延ばしにして自分のキャリアにダメージを与えるよりも、勇気を出して一歩を踏み出すことが大切です。 信頼できる相手に相談しながら、具体的な行動プランを立ててみてはいかがでしょうか。
退職を先延ばしにすることは、実はリスクでもあります。今の状況は、新しい環境に飛び込むチャンスを逃している状況でもあるのです。
また、退職したい気持ちを抱えたまま働き続けるのは、メンタル面でも大きな負担となります。仕事へのモチベーションは下がり、パフォーマンスも落ちていくでしょう。
「辞めたいのに辞められない」もやもやとした気持ちは、日々を鬱々としたものにしてしまいます。
上記のストレス簡易調査票をご自身でお試しいただいて、現状を見つめ直すのもおすすめです。
キャリアを良い方向に進めていくためには、先延ばしは禁物だと肝に銘じておきましょう。「今」こそが、退職を伝える絶好のタイミングなのかもしれません。
どうしても自分で退職を言い出せないときは、退職代行サービスを利用するのもおすすめです。実際に退職代行を利用すると、どうなるのか?流れや使い方が知りたい方にはこちらの記事をご参照ください。
6. 退職の意思表示を行動に移そう

ここまで、退職を言い出すタイミングや伝え方、引き止めへの対処法などについて詳しく解説してきました。記事の内容を踏まえた上で、一歩踏み出してみましょう。
いざ上司の前に立つと、緊張は避けられないかもしれません。まずは深呼吸をして、自分を落ち着かせることから始めてみてください。
準備を整えたら、あとは実行あるのみ。「行動に移す勇気」が、何より大切です。退職は、新たなキャリアへの第一歩。
この記事があなたの背中を押す一助となれば幸いです。新天地でのご活躍を、心よりお祈りしています!