仕事のストレスで限界を感じていませんか?「もう会社に行きたくない」という思いを抱えながらも、即日で退職できるのか悩んでいる方は多いでしょう。実は、ストレスが原因で適応障害などを発症した場合、法的に「やむを得ない理由」として即日退職が認められます。
この記事では退職のプロが、即日退職の方法から退職後の生活設計まで徹底解説します。
- ストレスが原因の適応障害は即日退職の正当な理由になり、法的にも認められている
- 即日退職を成功させる5つの手順(自己評価、医療機関受診、退職意思伝達、有給活用、円満な引継ぎ)
- 退職後の経済的不安を解消する方法(失業保険や傷病手当金の申請方法と条件)
1.ストレスによる即日退職は法的に可能なのか?

ストレスがもう限界で「今すぐ会社を辞めたい」と思っても、法的に可能なのか不安に感じる方は多いでしょう。実は、精神的・身体的な症状が出ている場合、民法上の「やむを得ない事由」として即日退職が認められるケースがあります。
ここでは、ストレスによる即日退職の法的根拠について解説します。
適応障害やうつ病は即日退職の正当な理由になる
ストレスが原因で適応障害やうつ病などの精神疾患を発症した場合、これは法的に「やむを得ない理由」として認められ、即日退職が可能です。適応障害は「ストレス性障害」とも呼ばれ、仕事が原因のストレスであれば、その環境から離れることが回復への第一歩となります。
会社側も労働者の健康状態が著しく悪化している場合、無理に働かせ続けることで症状が悪化し、より深刻な問題に発展する可能性を考慮します。そのため、医師の診断書があれば、会社側も即日退職に応じるケースが多いでしょう。
民法が保障する退職の権利とは
即日退職の法的根拠として重要なのが、民法第627条と第628条です。
- 民法第627条:期間の定めのない雇用契約は、いつでも解約の申入れができ、申入れから2週間経過すれば契約は終了する
- 民法第628条:「やむを得ない事由」がある場合は、即時に雇用契約を解除できる
出典:e-GOV 民法
つまり、何も理由がなくても退職の申し出から2週間で退職可能ですが、健康上の理由など「やむを得ない事由」がある場合は、即日でも退職が認められるのです。
会社の就業規則より民法が優先される理由
会社の就業規則で「退職の申出は1ヶ月前(あるいは2ヶ月前)までに行うこと」と定められていても、優先されるのは民法の規定です。これは日本の法体系において、法律が就業規則よりも上位に位置するためです。
会社が「就業規則では1ヶ月前に申し出ることになっている」と退職を拒否しても、民法上の権利として2週間で退職できることを知っておきましょう。ただし、円満な退職のためには、可能な限り会社側と話し合いを行い、理解を得る努力も大切です。
2.即日退職が認められる「やむを得ない理由」とは

ストレスによる即日退職が法的に可能だとわかっても、具体的にどのような理由なら認められるのか気になるところです。会社側を納得させるためには、「やむを得ない理由」として認識される明確な事由が必要です。
ここでは、即日退職が認められる具体的な理由とその証明方法について解説します。
医師の診断書がある場合
ストレスによる心身の不調を理由に即日退職を希望する場合、心療内科や精神科での診断書が強力な証拠となります。診断書には以下の内容が含まれていると効果的です。
- 適応障害やうつ病などの診断名
- 現在の就労が困難である旨の医師の所見
- 休職ではなく退職が望ましい理由
診断書の取得方法としては、まず心療内科や精神科に予約を取り、初診時に「仕事のストレスで眠れない」「出社が怖い」など具体的な症状を正直に伝えましょう。無理に症状を作る必要はなく、実際に感じている苦痛を率直に話すことがポイントです。
参考元:阪野クリニック 仕事を辞めたいときに診断書は必要か?
ハラスメントや過度な労働負荷によるストレス
職場でのパワハラやセクハラ、モラハラなどのハラスメントや、過重労働も即日退職の正当な理由となります。これらの状況が続くと、心身の健康を著しく損なう恐れがあるからです。
この場合ハラスメントの具体的な証拠を残しておくことが重要になります。
- ハラスメントの内容・日時・場所を記録したメモ
- 関連するメールや社内チャットのスクリーンショット
- 目撃者がいる場合はその証言
- 過重労働の場合は、労働時間の記録や業務内容のメモ
これらの証拠があると、会社側も即日退職を認めざるを得ない状況になりやすく、また後に労働基準監督署に相談する際にも有効です。
家族の介護や災害など個人的事情による即日退職
家族の急な病気や事故による介護の必要性、自然災害による住居の喪失なども、即日退職が認められる「やむを得ない理由」です。
特に親や配偶者の急な入院など、予期せぬ事態で介護が必要になった場合、仕事と介護の両立は困難です。会社に対しては「家族の介護のため、一旦退職して状況が落ち着いてから再就職を考えたい」と伝えれば、多くの場合理解が得られるでしょう。
また、地震や水害などの災害で住居を失った場合も、生活再建が優先されるべき状況として認められます。こうした場合は、具体的な状況を説明し、今は仕事どころではないことを率直に伝えましょう。
医師の診断書がなくても即日退職できるケース3パターン
医師の診断書がなくても即日退職が可能なケースがあります。
有給休暇を活用する
民法第627条に則り、2週間以上の有給休暇が残っている場合、退職届を提出した上で有給休暇を消化すれば、事実上の即日退職が可能です。有給休暇の取得は労働者の権利ですので、会社は拒否できません。
参考元:e-GOV民法
欠勤扱いで退職する
有給休暇がない場合でも、欠勤扱い(無給)で2週間を過ごすことで退職が可能です。ただしこの方法は会社との関係が悪化する可能性が高いため、可能な限り話し合いを行うことをおすすめします。
会社側の同意がある
状況を説明して会社側が理解を示せば、診断書がなくても即日退職に応じてもらえる可能性があります。特に小規模な会社や理解のある上司がいる職場では交渉の余地があります。
なお、退職代行サービスの特徴を見ると、「即日退職」と記載されているものが多くあります。厳密にいうと、「”即日”会社に行かなくていい」だけであり、本日退職手続きが完了するわけではありません。私たち編集部が誰にでもわかりやすいようにまとめた「退職代行を利用した即日退職」の記事はこちらからご確認できます。
3.ストレスで即日退職を決断すべきサインと症状

ストレスは誰にでもありますが、「もう限界だ」と感じるレベルに達したとき、即日退職を検討すべきかもしれません。しかし、自分の状態を客観的に評価するのは難しいもので、「この程度でストレスと言えるのか?」と不安に感じる方もいるかもしれません。
その判断基準として、このセクションでは即日退職を真剣に考えるべき身体的・精神的・行動的なサインと症状について詳しく解説します。
身体的な症状(不眠、めまい、体重変化など)
ストレスが限界に達すると、様々な身体的症状として表れます。以下のような症状が現れたら注意が必要です。

これらの症状が1つだけではなく複数現れる場合、また長期間続く場合は、体がSOSを発しているサインです。まずは医療機関を受診し、適切な対処を考えましょう。
精神的な症状(集中力低下、不安感の増大など)
心理的な症状も重要なサインです。

これらの症状が顕著になると、日常生活や仕事のパフォーマンスに重大な影響を及ぼします。早めの対処が必要です。
行動的な症状(アルコール摂取量の増加、欠勤の増加など)
ストレスによって日常の行動パターンが変化することもあります。

これらの行動は一時的な気分改善をもたらすかもしれませんが、長期的には問題を悪化させる「自己治癒行動」になりがちです。早めの専門家への相談が望ましいでしょう。
職場での兆候(業務効率の低下、人間関係の悪化など)
職場環境でも、深刻なストレスを抱えている場合には様々な兆候が現れます。まず目立つのが仕事の質や量の低下です。締め切りに間に合わなくなったり、以前なら簡単にできていた業務でもミスが増えたりします。これは集中力や判断力の低下が原因であることが多いです。
人間関係の面では同僚との協力が難しくなり、孤立してしまうことがあります。また、コミュニケーションの減少も特徴的で、会議での発言が減ったり、職場での雑談に参加できなくなる方もいます。
さらに、感情のコントロールが難しくなり、些細な指摘に過剰に反応したり、思いがけず涙が出てしまったりすることもあります。以前は情熱を持って取り組んでいた仕事にも意欲を失い、「なぜこの仕事をしているのか」という疑問を持つようになることも珍しくありません。
これらの兆候は周囲の人にも気づかれやすく、仕事の評価にも直接影響します。長期間このような状態が続くと、一時的なストレスではなく「能力の問題」と誤解され、キャリアに悪影響を及ぼすかもしれません。自分自身のこうした変化に気づいたら、早めの対策を検討することをおすすめします。
4.ストレスが原因の即日退職を成功させる5つの手順

ストレスによる即日退職を決断したら、次はどのように進めればよいのでしょうか。焦りや不安から適切な手順が踏めないとなると、思わぬトラブルを招く可能性があります。
このセクションでは、ストレスが原因の即日退職を円滑に進めるための5つの具体的なステップを順を追って解説します。
- 自分の状態を客観的に評価する
- 必要に応じて医療機関を受診する
- 退職の意思を伝える最適なタイミングと方法
- 有給休暇を利用した事実上の即日退職法
- 円満な引き継ぎと今後の関係性への配慮
手順1:自分の状態を客観的に評価する
まず、自分の心身の状態を冷静に評価しましょう。即日退職が本当に必要かどうかの判断基準として以下のポイントを考えてみてください。

チェックリストを作成し、自分の状態を点数化してみるのも一つの方法です。8割以上のポイントに該当する場合や、特に健康面での症状が深刻な場合は、即日退職を真剣に検討すべきでしょう。
また、信頼できる家族や友人に相談し、第三者の視点からもアドバイスをもらうことで、より客観的な判断ができます。
手順2:必要に応じて医療機関を受診する
ストレスによる症状がある場合、心療内科や精神科の受診をおすすめします。初診時の伝え方のコツは、
- 症状を具体的に伝える(いつから、どのような状況で、どのような症状が出るか)
- 仕事との関連性を説明する(どのような業務や人間関係がストレスになっているか)
- 睡眠、食欲、気分の変化など、日常生活への影響を詳しく伝える
- 退職を検討していることを正直に伝え、診断書が必要な旨を相談する
以上の内容を予めイメージしてから医師に伝えましょう。
診断書は通常、2回目以降の診察で発行されることが多いため、初診時にその旨を伝えておくと良いでしょう。診断書の発行には1,000円〜5,000円程度の費用がかかる場合があります。
手順3:退職の意思を伝える最適なタイミングと方法
退職の意思を伝える際のタイミングと方法は非常に重要です。

上記のように自身が属する企業や部門の慣習やルールに考慮することが望ましいです。
効果的な伝え方
- 事前に面談の時間を取ってもらう(「個人的な相談があります」など)
- 診断書を用意し、健康上の理由で働き続けることが困難なことを説明
- 感情的にならず、事実に基づいて冷静に状況を伝える
- 会社への感謝の気持ちも忘れずに伝える
- 即日退職を希望する旨と理由を明確に伝える
会社側から「休職ではダメか」と提案されることもありますが、適応障害などの場合は「環境を変えることが回復には必要」と医師に言われていることを伝えましょう。
手順4:有給休暇を利用した事実上の即日退職法
会社が即日退職に難色を示す場合でも、有給休暇を活用することで実質的に即日で職場を離れる方法があります。この方法は法的にも問題なく、比較的スムーズに退職プロセスを進められるでしょう。
- 退職届を提出し、「退職日までの期間は有給休暇を全て使用したい」と伝える
- 法律上、有給休暇の取得は労働者の権利であり、会社は原則として拒否できない
- 残りの有給日数が2週間以上あれば、事実上の即日退職と同じ効果が得られる
これは複数のメリットがあります。まず法的に問題ない形で即日から会社に行かなくて済むこと、その期間も給与が支払われること、そして退職日までの期間も社会保険が継続されることなどです。
つまり、身体的・精神的な負担を軽減しながらも、経済的な不利益を最小限に抑えられるわけです。
有給休暇が2週間未満の場合でも、「残りの有給を消化した後、体調不良のため欠勤扱いにしてほしい」と伝えることで、実質的に即日で職場を離れることは可能です。ただし欠勤期間の給与は発生しません。
退職代行を使って有休消化をする方法に関して、私たち編集部が誰にでもわかりやすいようにまとめた「退職代行でも有休消化するには」の記事はこちらからご確認できます。
手順5:円満な引き継ぎと今後の関係性への配慮
即日退職であっても、可能な範囲で引継ぎに配慮することで、会社との関係性を良好に保つことができます。

これらの配慮は法的義務ではありませんが、特に同じ業界で再就職する可能性がある場合や、良い推薦状が必要な場合には重要です。体調が優先であることを忘れず、無理のない範囲で対応しましょう。
5.即日退職したいなら退職代行という選択肢もあり

ストレスによる即日退職を決めたものの、「会社に直接伝えるのが怖い」「引き留めに対応する自信がない」と感じる方も多いでしょう。特にメンタル不調の状態では、退職交渉自体が大きな負担になります。
そんな方に検討していただきたいのが「退職代行サービス」という選択肢です。
退職代行を使うメリット
退職代行サービスとは、あなたに代わって会社に退職の意思を伝えるサービスです。以下のようなメリットがあります:

特にメンタルヘルスの問題を抱えている場合や、職場でのハラスメントが退職理由の場合、退職代行サービスは大きな助けになります。
私たち『退職代行セカステ』は、行政書士法人と連携しており、退職検討の悩みを抱えている人の味方です。ご所属している企業と対等にコミュニケーションを行い、新しいキャリアを歩む勇気の必要な第一歩を並走させていただきます。
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退職代行サービスの流れ
退職代行セカステを利用する際の一般的な流れを参考に、退職代行サービスの流れを見てみましょう。
料金は一般的に3〜5万円程度ですが、サービス内容によって異なります。弁護士が運営する退職代行サービスであれば、会社との交渉もより確実に行えるメリットがあります。
退職代行サービスは、他にも多くのサービスがございます。私たち編集部が2024年12月にリサーチした80個近い退職代行サービスの中から厳選した、「おすすめの退職代行サービス10選」はこちらからご確認できます。
6.即日退職後の経済的不安を解消するための知識

即日退職を決断する際、多くの方が「退職後の生活費はどうなるのか」という経済的不安を抱えています。特にストレスによる退職の場合、回復期間が必要なため、すぐに次の仕事に就けないこともあるでしょう。
このセクションでは、退職後の経済的不安を解消するための具体的な方法と利用できる制度を解説します。
失業保険の申請方法と受給条件を確認する
ストレスが原因の退職であっても、一定の条件を満たせば失業保険(正式名称:基本手当)を受給できます。

自己都合退職の場合は原則として3ヶ月の給付制限期間がありますが、体調不良を理由とする場合は医師の診断書があれば給付制限が免除されることがあります。この場合、特定理由離職者として扱われる可能性があります。
申請からの流れ
- 退職後に必要な書類を持ってハローワークで求職申込み
- 説明会への参加と受給資格の決定
- 定期的な失業認定日に来所して求職活動実績を報告
求職申込みに必要な書類
- 離職票(会社から発行)
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 診断書(あれば)
- 写真2枚(3×2.5cm)
- 銀行口座の通帳やキャッシュカード
金額の目安としては、離職前6ヶ月の平均給与の50〜80%程度が支給されます。これは年齢や給与によって異なりますが、月額10〜25万円程度となり、受給期間は年齢や被保険者期間によって90〜360日間となります。
医師の診断書があれば給付制限が免除される可能性が高まるため、退職前に診断書を取得しておくことをおすすめします。
参考元:ハローワークインターネットサービス 雇用保険手続きのご案内
傷病手当金など医師の診断がある場合は給付金を申請する
ストレスによる病気で働けない場合、失業保険以外にも以下の給付金が利用できる可能性があります。

傷病手当金の申請条件としては、業務外の病気やケガで働けない状態であることが必要です。また、連続する3日間の待機期間を経た後、4日目以降の休業に対して支給されます。申請には医師の証明が必要となります。
申請方法
- 勤務先の健康保険組合または協会けんぽに申請
- 医師の意見書、事業主の証明、被保険者の申請書が必要
- 退職後の申請は手続きが複雑なため、専門家のサポートを受けるとスムーズ
傷病手当金と失業保険は原則として同時に受給できませんが、傷病手当金の受給後に失業保険を申請することは可能です。状況に応じて有利な方を選ぶとよいでしょう。
参考元:全国健康保険協会(協会けんぽ) 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
退職金の受け取りに関するポイントを知ろう
自己都合による即日退職の場合、退職金に関しては以下の注意点があります。
- 退職金への影響
- 退職金の確認方法
- 知っておくべきポイント
まず、退職金への影響としては、会社によっては自己都合退職の場合に退職金が減額される可能性があります。特に勤続年数が短い場合は大幅な減額や支給対象外となることもあります。ただし、退職理由が健康上の理由であれば、会社と交渉の余地があるかもしれません。
退職金の確認方法については、退職金規程の確認が重要です。これは会社の規定集や就業規則に記載されていることが多く、また、人事部や総務部への直接確認や、退職届提出時に退職金の計算方法や支給時期について質問すると確実でしょう。
退職金に関する注意点としては、退職金の支給時期は会社によって異なり、通常は退職後1〜3ヶ月以内となっています。そして退職金には所得税が課税されますが、退職所得控除が適用されます。また、即日退職であっても退職金の権利は失われず、規程に該当すれば受け取ることができます。
退職金が見込めない場合や金額が少ない場合は、失業保険や傷病手当金などの社会保障制度を最大限活用する計画を立てましょう。
7.ストレスによる即日退職は自分を守るための選択である

仕事のストレスから身を守るための即日退職は、決して恥ずべき選択ではありません。適応障害などの診断があれば法的にも認められる正当な理由となります。適切な手順で退職し、心身の回復期間を確保した上で、次のキャリアに向けた準備を進めましょう。
健康を最優先にした決断が、長い目で見れば最良の選択となります。一人で悩まず、退職代行などの専門家のサポートを活用してください。